Wednesday, March 13, 2013

社会人類学?なにそれ?


「社会人類学を専攻しています」という自己紹介をすると、だいたいどういう学問なのか説明するところから始まります。
これが意外と難しいことに最近気がついたので、自分の考えをまとめる意味も兼ねて、社会人類学とはいったいどういう学問なのかを今回は書きます。自分自身もまだ修士の途中で真髄を語れるほどマスターした訳ではないですが、予備知識がない人が読んでも分かるようになるべく簡潔に書いてみようと思います。

すごく簡単に言うと、人類の社会的または文化的な一面を研究する学問が社会人類学です。
世界中に存在する様々な社会と文化のありかたをより深く理解することを主な目的としています。人間の生活の中で起こるあらゆる文化・社会的事象が研究対象となるので、リサーチトピックは多岐にわたります。生活様式、習慣的行為、社会形態、なんでもアリです。(具体的な研究の事例もあげたいのですが、長くなるのでまた今度書きます)
人間社会を研究するというのは社会科学全般に言えることですが、社会人類学の特徴のひとつとして参与観察という調査方法が挙げられると思います。
一言で言うと、研究対象となるコミュニティに長期間住み込んで定性的データを集めるフィールドワークです。調査者自身がそのコミュニティの一員となって観察やインタビューをすることが目的なので、年単位で行われることもあります。修士過程の段階では時間がないため参与観察はしませんが、博士論文のリサーチには必須です。

アフリカの奥地のなんとか族の一員になって情報を集めて、それを分析して、それに何の意味があるの?と思われる方もいるかと思います。
まず第一に、単純に面白いです。
文化や社会というものを普遍的なものとして捉えたアプローチではないからこそ、いつも新しい発見があるように思います。普段の生活では当たり前で、存在すら特に意識していないような様々な事象を、成り立ちから分析していくので常に新鮮です。
そして「こういう宗教観の下こういう習慣や考え方をもっている人がいるんだ」というような発見は、人間というものをより深く理解することにつながると思います。
なぜ社会には階級というものが存在するのか?差別や偏見はどのように生まれるのか?などなど。人間が社会性をもった生物である以上、社会や文化を研究する意義は常にあると思います。更に「文化というものに優劣はなく、すべて平等に論理的思考に基づいた研究の対象になりうる」という考えを体現しているという点に置いても、社会人類学の存在意義はあると感じます。
最後に、マリノフスキという社会人類学者の言葉なのですが、自分がこの学問に感じている魅力を要約していると思うので勝手に和訳してみました笑
(有名な本なのでちゃんと和訳されたものが出版されているはずです。興味がある方は是非探してみてください)
上記の参与観察という研究方法の真意もこの言葉に隠されているように思えます。

誰もが生まれながらにして縛られている「習慣」「信仰」「偏見」などから自らを解放しない限り、ソクラテスの言う人の知の境界にたどり着くことは出来ない。この非常に重要な目的を達成するためには、他人の価値観や考え方を、その人の視点から理解しようとする癖をつけるのが一番効率的である。偏見や復讐心がヨーロッパの国々を分断しようとしているこの時代にこそ、人類はこのような寛容性を身につけるべきである。人々が今まで理想として掲げてきた科学や宗教といったものが、忘却の彼方へと追いやられようとしている現在こそ、認容力が必要なのである。洗練された深さを持った真の科学者であるという事は、このような雅量を示すことができるということではないだろうか。
1922年 ブロニスワフ・マリノフスキ
「西太平洋の遠洋航海者」より

We cannot possibly reach the final socratic wisdom of knowing ourselves if we never leave the narrow confinement of the customs, beliefs and prejudices into which every man is born. Nothing can teach us a better lesson in this matter of ultimate importance than the habit of mind which allows us to treat the beliefs and values of another man from his point of view. Nor has civilized humanity ever needed such tolerance more than now, when prejudice, ill will and vindictiveness are dividing each European nation from another, when all the ideals, cherished and proclaimed as the highest achievements of civilization, science and religion, have been thrown to the winds. The Science of Man, in its most refined and deepest version should lead us to such knowledge and to tolerance and generosity (Malinowski 1922:518)


関係ないですが、この前友達とパブに行ったときに飲んだモルドワインがおいしかったので貼ります!温かいジュースみたいなワインです。普段お酒は飲まないほうですが、これは飲みやすかったです。





3 comments:

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  2. 初めまして!もちろんです!
    連絡先を教えて頂ければこちらからメールします。

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